紳士服業界が主導するビジネス用スマートカジュアル

メンズ スマートカジュアル
日本国内におけるファッションの流行というのは、ヨーロッパ(特にイタリア)のそれとは異なる性格を持ちます。国内におけるメンズファッションの流行は主に紳士服業界主導であり、オシャレというよりは業界の都合によるものと考えられます。

その理由は多種多様なファッションアイテムを製造販売するよりは、アイテムの種類数を絞ったほうが効率的であることが挙げられます。加えて近年のビジネススタイルのカジュアル化の影響を受け、売上が減少した同業界ではその傾向が加速しています。

過去を辿れば「冠婚葬祭にも使える」といった謳い文句でブラックスーツを販売しました。しかし冠婚葬祭は頻繁に出席するものでも無く、黒はまったくビジネス向きの色では無いので自然消滅しました。

最近ではクールビズに対応していると、ビジネスポロシャツを推しはじめました。しかしポロシャツは生地の関係で日本の夏には暑く、ビジネスではラフ過ぎるスタイルであることも相まって結局流行らずに終わりました。

それでも満員電車で邪魔者扱いされてもビジネスリュックは一定の成果が出ています。しかし持ち歩くタブレットやPCなどは実際には使用される機会も少なく、不安性で持ち物が多いビジネスパーソン向けといった感じです。

そしてコロナ禍の影響でリモートワークが増え、ウエブ会議用のファッションが新たに登場しました。これは業界にとってまたとないチャンスであり、これをクールビズにも対応するスマートカジュアル ファッションと定義しました。

その代表的なスタイルが上記の写真でございます。簡易デザインのTシャツ・ジャケット・パンツは、生地も薄く複雑な縫製も必要としないので大量生産向きです。このスタイルは本来リモート会議用の上半身仕様ですが、これをビジネス用途として売り出したわけです。

そしてIT業界などの比較的若年層の労働者が多い産業において、コロナ禍以降に人気が出ている印象です。しかしこのスタイルは既存のビジネスファッションを塗り替えるほどの勢いは無く、スマートカジュアルで検索をしても紳士服ブランドばかりが上位に並んでいるのが現状です。

加えてビジネススタイルにおいては清潔感があることは前提ですが、国内においては「信用される服装」と「周囲(相手)に合わせた服装」が重要となります。これら2つの要素を満たす服装はスーツ スタイルで、これが最も容易で認知度が高くて服装選びも楽です。

確かに夏は暑いとか体が締め付けられるなどの欠点はありますが、楽なことばかりをして給料は受け取れないので仕方がありません。信用の点においては、振り込め詐欺の受け子ですら慣れないスーツにネクタイ姿で現金を受け取りに行くことでも証明できます。

私は最近都心の官庁街を訪れることがあるのですが、そこで働く方々はスーツにシャツといった保守的なスタイルを堅持しており、Tシャツ・ポロシャツ姿は皆無でございます。さらに夏であっても会議ではジャケット着用が指定される場合もあります(ネクタイ無しは可)。

そのように聞くと時代遅れと言い出す方々が必ずいるのですが、実際は公務員は楽な服装より周囲と同じで目立たない服装が好まれます。派手な服装やTシャツで仕事をすれば納税者から苦情を受ける場合もあるので、そういった面倒は回避する必要があるからです。

そのような観点からはジャケットはまだしも、ビジネスファッションにおけるTシャツは不適切な場面が多々あります。例えば「御社の服装は涼しそうでうらやましいですなぁー」といったお世辞は「社外の打ち合わせにTシャツで来ますか?」という京都風の嫌味であったりします。

そしてジャケットとTシャツのスタイルは夏向けではありません。これはセットで着用するものなので、暑くてジャケットを脱ぐと運動部仕様となります。さらにお腹を隠すためにTシャツの下にインナーを着用したりすると、暑すぎて意味不明なスタイルになります。

加えてこのスタイルは40代以上の方々にとって、若々しく見えるわけでもありません。無地Tシャツ(特に白)自体が老け見えするアイテムなので、どんなに工夫をしたところで若者さんと同じような外見とはなりません。

無論社外の人物との接触が無く、会社でTシャツスタイルを容認している環境であればまったく問題はありません。ただしどのような服装であれ、社外の人々は貴方個人のファッションでは無く、所属する組織の服装と捉えていることには注意をする必要があります。

そういったわけでファッションの流行には無関係とお考えの皆様であっても、気づかずに流行に乗らされていたりします。また店舗の販売員も「スマートカジュアルは業種によっては難しい場合もあります」などと言うはずもありません。

ちなみに国内のファッション スタイルには地域差がありまして、最も洗練された服装の方々が多いのは神戸であると考えております。すべての大都市圏を訪れたわけではありませんが、同地はビジネススタイルを含めて正統な「外出着」のファッションの方々が多い印象です。

逆に他人の目をあまり気にせず自分本位で、「楽チン」とか「機能性」などの宣伝文句に安易に飛びつき、上記のような流行に簡単に乗せられ、そういった服装がオシャレであると信じている人々が多いと感じられるのが東京といった印象です。

とは言ってもそれは日本に限らずイタリアでも同様で、ミラノやフィレンツェの人々はファッショナブルな人々が多いことで知られている一方で、首都であるローマの人々のファッションはダサいというのが当地では通説であったりします。

【関連記事】

ビジネス アタイアで指定された服装とは

ココをClick→記事タイトルとURLをコピー

コメント

当ブログの剽窃はご遠慮ください

© 2025 やさぐれスタイリスト

過去記事

もっと見る