スーツやジャケットのDROP(ドロップ)表記はヨーロッパと日本では意味が違う

ラルフローレン スーツ
欧米製スーツやジャケットのサイズは基本的に大雑把に表記されています。例えばヨーロッパの場合はXS(または44)S(同46)M(同48)L(同50)のように表示されています。さらにブランドによってシルエットやデザインが異なるので、サイズが合っても体型に合わないケースがあります。

一方で国産ビジネススーツは身長と体型を組み合わせた国内独自のJIS表記が採用されています。身長は2~9号・体型はY~E体といったように細かく分類されています。例えば身長170cmで標準体型より筋肉質の私の場合は5号YA体となります。

この細かいサイズ表記はメンズスーツのみに適用され、他の衣服は比較的大雑把なサイズで表記されています。したがってスーツは細かく体型に合わせることが可能である一方で、多様なサイズ展開を必要とするために非効率的と言えば非効率的です。

これは過去において男性用仕事着であるスーツは、購入してすぐに着用できる必要性などがあったためと思われます。その反面、ヨーロッパでは購入後に体型に合わせて修正するのが一般的なので、そこまでサイズが細分化されていません。

ちなみにこのJIS規格は第二次大戦後、各国産メーカーのサイズ表記のバラつきが大きく、消費者にわかりやすくする目的で制定されました。その後国民の体型の変化により改定されてはいますが、規格に強制力は無いので採用は各メーカーに一任されています。

そして近年、そのJIS規格の体型表記にDROP表記が導入されはじめた模様です。DROP表記は立体的なデザインが特徴のイタリア製スーツなどで散見され、(胸囲cm-胴囲cm)÷2の数値で表記されます。

このDROPはスーツやジャケットのシルエットの絞りを数値化したもので、数値が大きなるほどウエストが絞られたデザインになります。しかしウエストの絞りの位置はブランドによって異なるので、ある程度の目安とも言えます。

例えばDROP7と表記されている上記のスーツ ジャケットの場合、胸囲とウエストの差が14cmです。また一般的にヨーロッパ(特にイタリア)におけるDROP表記は6~8を多く見かけます(むしろその数値以外はほとんど見たことがありません)。

DROP7は比較的ウエストが絞られているので、前ボタンを留めると窮屈に感じられる場合もあります。加えて胸が薄い体型の方は胸囲が足りないので、ボタンを留めた際に襟が途中でくの字に折れ曲がるなど外観が悪化する可能性もあります。

このヨーロッパ仕様のDROP表記を、JIS規格の体型に当てはめたのが日本式DROP表記と思われます。例えばDROP8=Y体・DROP7=YA体……など、元来日本の体型表記がDROPと同様の算出方法なのでそれを置換したと考えられます。

しかしながら本来のDROPの意味とは違った解釈の説明が見受けられます。例えば「DROP8は細身体型」、「DROP4はがっしり体型」などがそれに該当します。そして仮にそれらが実測表記である場合は問題が発生します。

基本的にDROP8など高い数値は逆三角形の体型向きであり、胸囲が小さい細身の方が着用すると胸部分がスカスカになります。逆にDROP4はボックス型のシルエットなので、がっしり体型の方がウエストサイズで合わせると胸部分が入らなくなります。

一体どういった経緯でこのような解釈になったのかは不明ですが、単にDROP表記がオシャレであるとか現代風といった理由で採用しているのであれば、混乱を招く可能性があります。

実際のところ、国内のビジネススーツ業界は独特な慣習を持ち合わせている印象です。そしてこの規格優先の製造方法が画一性をもたらしている反面、いつまでたってもスーツのデザインがスタイリッシュにならない要因でもあります。

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